四国から鳴門大橋をわたるとき、淡路島を見ると、細長い岬が近づいてくる。
一年ほど前まで、そこには渦潮を見るレストランがあった。私は行ったことはないが、ずいぶん古くからあったのだろう。たぶん老朽化で撤去されたのだが、その跡からでかいカマクラのようなものが出現した。あれはおそらく、トーチカなのだ。
すぐそばに、作業用のユンボやダンプがあるが、それよりもはるかにでかい。当初、土に半分ほど埋まっている状態だったが、取り除こうとしているのか、どんどん本体が土から露出してきて、想像以上に大きな構造物だったことがよくわかる。それ以上に、とてつもなく頑丈なコンクリートらしく、上部から少しづつ削っていくが、なかなか進まないのが素人目にも明瞭だ。普通のビルなら、二日もあれば終わるだろう。
トーチカの開口部は、あまり射角が広くない。ちょうどスピーカーの四角錐みたいな形状だ。鳴門海峡は狭く、このトーチカで狙うぶんには、射角を広げる意味がなかったのだろう。岬の先端だけでなく、左右面にも砲台があったのかもしれない。
しかし、さきのレストランは、このトーチカの上に建設されていたのだ。
立派な戦争遺跡だと思うが、そんな話も聞いたことがない。よくわからないが、この場所には、道の駅が新設される予定のようだ。いまは、仮の道の駅が、近くの高台にできている。どちらも、歴史的、あるいは自然景観のことはあまり考えられていない。
せめてトーチカの学術的調査は終わっていてほしいものだ。