剪定というより伐採に近かった。樹齢は二十年ほど、幹は地上一メートルほどのところで八方に分岐して広がり、隣の敷地に覆いかぶさるようになってきたので、母親から切り詰めるように依頼がきたのだ。こちら側にある幹を切るのはたやすいが、隣地方向に伸びた幹を、こちら側に切り倒すのは少々難しい。まずはこちら側にある幹をすべて切り落として、向こう側の幹がこちらに倒れ込むときの障害物をのぞく。それから木に登り、なるべく多くの枝を剪定鋸で切って、こちら側に落としていく。これで、だいぶ幹の重量が軽くなったはず。それから、手の届く限り高い場所にロープをかけて、倒してある幹に万力(テンションをかけて引っ張るロープワーク)をかけ、こちら側に引っ張っておく。倒す方向に切り欠きを作り、万力に力を加える。反対側の数センチ高いところに、少しずつ切り目を入れていく。すると、やがて木の裂ける「メリ」という音がするので、そこからまた万力に力を加えると、また「メリリ」と音がするので、反対側の切れ目をもう少し切り込む。「パキ」と、今度はより切迫した音がするので、急いでロープに取り付いて、体全体で引っ張っていく。もちろん、木の高さより十分離れた場所からだ。「バキバキバキ」と、幹の裂ける音とともに、地面にある自らの小枝と幹の上に、しずかに幹が倒れてくる。
この作業を数回やって、なんとか隣地に幹が倒れこまないように処理できた。ケガもないし、ここまでうまくいく作業は、なかなかない最近の近野ではある。あとは、できるだけ玉切りにしてキューブで自分ちに運ぶ。半分ほどしか運べず、明日は朝から残りを運んで、薪割りして薪棚に積めれば上出来だ。
しかし、明日は図書館で本を返却して新しいのを借りねばならない。時間があるだろうか?